言語の時間変化と定常状態
この記事は哲太が書きました。
「個人における言語使用について」でみた言語写像を通してコミュニケーションの性質を考える。コミュニケーションへ向かう気持ちとは何なのか。
1.コミュニケーション停止の条件
コミュニケーションの性質上、相手のことばを聞いたあとには自分が発話することが期待されます。もし自分が話すのをやめたのなら、この時点でコミュニケーションは終了します。お互いにこの性質をみたすようにコミュニケーションがされた場合、コミュニケーションは時間的に連続します。
では、どちらかが発話をやめる条件は何でしょうか。これは相手から得られる情報が何もなくなったときだと考えることができます。つまり、ある共通のシニフィアン(話題)に関して想起されるシニフィエが全く一致しているときです。このとき、このシニフィアンについては2人の見解が一致しているという意味で、相手の言っていることが理解されのだと考えられます。
自分自身の言語写像だけでは、あるシニフィアンから想起されるシニフィエはいつも同じですから、コミュニケーションは停止したままです。これは1人ではコミュニケーションはできないという、しごく当然な事実を表します。
これはいわゆる最小作用の原理の人間版にも思えます。最小作用の原理とは、たとえば熱の分布は、温度の高いところから低いところの熱が流れて、一様になるときに熱的平衡を達成する、といったようなものです。自然はある種の物理量が最小になる状態目指して遷移していくように見える。人間の場合も同じように、ある種の情報に関する平衡状態のようなものを目指して心理的に遷移していくように思えます。
先の記事のことばでいえば、シニフィエyが一致するとはシニフィエ空間上の概念スペクトル表示において係数B_kが一致することです。係数の絶対値の2乗を確率として解釈すれば、これは確率分布{ |B_k|^2 }が一致することにほかなりません。
2.言語写像の時間変化
人間がことばを聞くたび、つまりシニフィアンを受け取るたびに概念分布(シニフィエの係数の2乗であらわされる確率の分布)は変化します。つまり、新たなアイデアを聞いて考えが変わるということです。この効果がなければ、2者間でコミュニケーションが進むということはありえません。したがって、言語写像Lは時間の関数になります。
これは、言語の「地理的分化は直接、時間の違いに還元でき、また還元しなくてはなりません」(フェルディナン・ド・ソシュール「ソシュール一般言語学講義 コンスタンタンのノート」、東京大学出版、2007)という主張にマッチするものです。
とにかく、定性的な考察から、言語写像は時間の関数であるということが言えるでしょう。コミュニケーションの停止条件から、Lが定常(時間的に変化しない)になったときの形に興味がありますから、Lについての微分方程式を立式できればよいと思われます。
| 固定リンク
「1-23.情報学」カテゴリの記事
- 予測市場と集合知の「実装」(2009.07.14)
- 言語の時間変化と定常状態(2009.01.10)
- 理想的コミュニケーションの不可能性について(2008.11.10)
- 言語の変化の「運動の3法則」による考察(2009.03.27)
- 情報の意味についてのアイデア(2008.12.27)


コメント